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NHK甲府放送局

NHK甲府放送局は、山梨県を放送対象地域とする日本放送協会(NHK)の地域放送局です。テレビとラジオで県域放送を行っており、山梨県の視聴者に向けて地域に密着した情報を提供しています。
この放送局の歴史は1936年にさかのぼります。当時、山梨県地方防空演習に際して仮放送が実施されました。翌1937年12月21日に社団法人日本放送協会甲府放送局として正式に開局し、ラジオ第1放送を開始しました。その後、1950年6月1日の放送法施行に伴い、特殊法人としての日本放送協会が設立され、一切の権利義務を継承しました。

テレビ放送は1959年9月18日に開始されました。当初、山梨県の地理的条件により契約数が少なかったため、翌年に東八代郡境川村坊ヶ峰(現:笛吹市)に中継送信所を設置し、契約数の増加を図りました。その後、技術の進歩とともに放送サービスも拡大し、2006年4月1日には地上デジタル放送を開始しました。これにより、ハイビジョン放送とワンセグ放送が同時に提供されるようになりました。
NHK甲府放送局の施設は、長年にわたり甲府駅から西に1kmほど離れた飯田地区に所在していました。しかし、建物や施設の老朽化および地上デジタルテレビ放送に関連した多様化への対応が困難になったことから、新局舎への移転が決定されました。2004年に甲府駅の北口への新局舎移転・建設が甲府市と基本合意され、2007年12月に具体的な建設場所が発表されました。新局舎は2010年に着工され、2012年5月21日に新局舎での業務が開始されました。5月24日にはグランドオープンを迎え、現在の甲府市丸の内(JR甲府駅前)に位置する新しい放送会館が誕生しました。
新局舎の特徴として、84mの鉄塔があります。これは県内の建築構造物では2番目に高い建物となっており、300段ある階段の最上段にはお天気カメラが設置されています。この新しい施設により、より効率的で高品質な放送サービスの提供が可能となりました。
NHK甲府放送局は、地域に根ざした放送局として、さまざまな番組を制作しています。現在の主な制作番組には、平日夕方に放送される「Newsかいドキ」や「ニュース山梨845」があります。また、不定期で金曜日に放送される「#金曜やまなし」も地域の話題を取り上げる重要な番組となっています。さらに、ラジオ第1放送では「かいラジ」が毎月最終金曜日に放送されており、地域の情報を音声で伝えています。
放送局のマスコットキャラクターとして、「しんげん君」、「ぶど雄」、「もも姫」が採用されています。これらのキャラクターは、山梨県の特産品や歴史にちなんだ愛らしいデザインで、視聴者に親しまれています。また、2007年度のNHK大河ドラマ『風林火山』の放送に伴い、イメージキャラクターとして「かんすけ君」も設定されました。
NHK甲府放送局は、地域の情報を迅速かつ正確に伝えるため、県内各地に情報カメラを設置しています。甲府駅北口の放送会館屋上をはじめ、身延、笛吹川フルーツ公園、上野原IC、大月、富士山駅前、新倉山浅間公園忠霊塔、三つ峠、河口湖、富士ヶ嶺、鳴沢村、そして富士山五合目にカメラが設置されています。特に富士山五合目のカメラは2019年10月9日から運用が開始され、夏山シーズンを中心に5月上旬から10月末まで稼働しています。このカメラは、通常の放送で使用されるだけでなく、災害発生時には現場の被害状況の映像を国や自治体に提供する重要な役割も果たしています。
2022年10月3日には、NHKプラスで地域向けのテレビ番組の見逃し配信が開始されました。これにより、視聴者はより柔軟に地域の情報を入手できるようになりました。さらに、2023年4月1日には組織改革が行われ、従来の部制からセンター制に移行しました。具体的には、コンテンツセンターと経営管理企画センターが新設され、より効率的な運営体制が整えられました。
NHK甲府放送局は、山梨県の地理的特性や文化的背景を踏まえた放送サービスを提供し続けています。富士山をはじめとする自然の美しさ、果樹栽培などの地域産業、そして歴史的な遺産など、山梨県の魅力を多角的に伝える役割を担っています。また、災害時の情報提供や地域の課題に関する報道など、公共放送としての責務も果たしています。
今後も技術の進歩や社会のニーズの変化に応じて、NHK甲府放送局は進化を続けていくことでしょう。地域に根ざした放送局として、山梨県の視聴者に寄り添いながら、質の高い情報と番組を提供し続けることが期待されています。

アナウンサー・気象予報士