カラスの親指 あらすじ
原作は道尾秀介「カラスの親指 by rule of CROW's thumb」(2008年・講談社文庫)。
第62回・日本推理作家協会賞(長編部門)受賞、第140回・直木賞候補作品。宝島社「このミステリーがすごい!2009」の第6位にランクインしている。(第1位は映画化もされた伊坂幸太郎「ゴールデンスランバー」、第4位は映画も大ヒットした湊かなえ「告白」だった)
あらすじを一言で表すと、詐欺師のコンビと同居することになった男女。そんな5人が自分たちの人生を変えてしまったヤミ金組織に報復を企てるストーリー。
主人公の武沢竹夫(阿部寛)は詐欺師である。しかし、昔はマジメな会社員だった。
数年前、妻がガンで病死。娘の沙代と二人で暮らしていたが、息抜きでギャンブル場に立ち寄ったのが転落の始まりだった。
武沢の同僚がギャンブルでハメられ、大負け。同僚のために借金の保証人になったが、その同僚が失踪。武沢はその莫大な借金を背負ってしまったのだ。それからは借金取りに追われる日々が続いた。
やがて、武沢は自分を苦しめるヤミ金業者の仲間になった。借金を返済するために、自らが借金取りになった。ヤミ金業者の言いなりになり、ひどい取り立てもした。返済能力がない母子家庭の母親から、強引になけなしの金を取り立てた。
結果、その母親は自殺した。
武沢は後悔した。そして憤った。彼が取った行動は非道なヤミ金業者を警察に潰してもらうことだった。警察に重要書類を渡すことで捜査のメスが入り、ヤミ金業者は壊滅状態に追い込まれた。
しかし、それからが本当の地獄。
武沢の自宅は報復の放火に遭い、娘の沙代がその犠牲になった。武沢は自分の運命を、愚かさを、不条理な世の中をうらんだ。それから武沢はそれまでの人生を捨て、別人の戸籍を手に入れ、詐欺師の人生を歩みだした・・・。
このように武沢の人物設定が救いようがないほど重い。
そんな武沢は、同世代の中年男・入川鉄己(村上ショージ)とコンビを組んでいる。愛称は「テツさん」。テツさんも武沢のような暗い過去をもっている。
武沢とテツさんが知り合ったのは、カギ屋のテツさんが武沢のアパートのカギを壊し、交換費用としてカギ代をぶんどろうというセコイ手口を働こうとした時に、見破られたのがキッカケだった。
そんなコンビのもとに現れる姉妹、河合やひろ(石原さとみ)と河合まひろ(能年玲奈)の過去がまた重い。
何しろ、武沢の強引な取り立てのすえに自殺した母親の娘なのである。
すべての元凶が例のヤミ金業者だと知った彼らとやひろの恋人・石屋貫太郎(小柳友)の5人はヤミ金業者から大金をまきあげる作戦を決行する・・・。
以後は軽快なスピード感を伴って結末に突入する。原作では読者の思い込みを巧みに利用したどんでん返しが痛快に感じた。読者はどんでん返しがあると言われると、ひっかからないように注意する。伏線は説明過多になりすぎるとネタバレしやすいし、説明不足だと消化不良でこれまた怪しくなる。原作でも後々考えれば後者のようなことがあったが、そのようなバランスがどうなるのかも楽しみとなった。
「カラスの親指」という一見するとよく解らないタイトルも読み進めると洒落がきいていることがわかる。すべてがわかると真相を誰かに話したくなる作品になることは間違いない。
詐欺師を扱った映画といえば「スティング」、邦画では「映画 クロサギ」が記憶に新しいが、予想できない結末、テンポの良さ、会話の軽妙さ、それらが映像化されれば必見の作品になることが期待される。
撮影は日活スタジオ、ロケ地は川崎競馬場など。
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カラスの親指 キャスト(出演者)
キャスト | 役 |
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|
阿部寛 | 武沢竹夫 |
石原さとみ | 河合やひろ |
能年玲奈 | 河合まひろ |
小柳友 | 石屋貫太郎 |
村上ショージ | 入川鉄己 |
| ヒグチ |
| 沙代 |
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