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純情きらり 第8週「初めての連弾」

 桜子 (宮崎あおい)は岡崎の女学校時代の同級生、薫子 (松本まりか)と偶然出会う。薫子のはからいで、桜子は有森家の元下宿人で婚約まで交わした斉藤 (劇団ひとり)と再会するチャンスを得るが、ピアノにかける情熱が揺らぐことを恐れ、約束の時間まで会うことを迷い続ける。
 そんな折、桜子はダンスホールに通っていることを西園寺塾の人間に知られ、除名の危機に立たされてしまう。達彦 (福士誠治)は除名を撤回させようと西園寺 (長谷川初範)に働きかける。


純情きらり 第8週「初めての連弾」 第43回 5月22日 (月)

 笛子 (寺島しのぶ)は "話なら後で聞く" と言って笛子を振り切って仕事に出かけていった桜子 (宮崎あおい)の帰りをマロニエ荘で待つことにした。だが、中では裸の女の下絵を描いている冬吾 (西島秀俊)とそのモデルと思しき八重 (原千晶)、そしてスリの容疑者・八州治 (相島一之)の登場、と笛子の住人に対する怪しい印象は急速に強まる。さらに財閥育ちの達彦 (福士誠治)までもがそのマロニエ荘に住み始めたと聞いて呆然とする。笛子は桜子が働く定食屋まで押しかけて説得を試みるが、仕事中だからと忙しく働く桜子のまえに成す術なく引き返すことにした。
「あんなにまでして、何で東京にしがみつきたいのかしら・・・」
 一向に桜子の気持ちが読めない笛子に、達彦は東京でしか学べないことがあると言い含めるが、笛子はまだすっきりしない。怪しげな住人やら、ダンスホールやらで気を揉む笛子の気持ちは達彦もよく解る。それはつい先日までの達彦自身が思っていた様なことだった。懸命に笛子の誤解を解こうとする達彦に、やがてマロニエ荘の住人も援護を始めた。"桜子に マロニエ荘にいてほしい" と願うマリ (椋木美羽)たちの言葉に、笛子は桜子に東京で固い信頼で結ばれた仲間がいることをこの時初めて知る。
 と、そんな笛子の方にも厄介な援軍が。桜子が先行き不安な浪人生活を続けていることに業を煮やした徳治郎 (八名信夫)が岡崎から桜子を連れ戻しにやって来たのだった。しかし、桜子はまだ仕事から帰って来ていない。一人だけマイペースな冬吾が徳治郎をなまはげに似てるだのともてはやし、徳治郎の高ぶる感情を刺激する。わけのわからない連中だとついに徳治郎の怒りが爆発しそうになったとき、ようやく桜子が帰宅した。
 桜子は土下座をしてまで東京での生活に許しをもらおうとするが、徳治郎は首を縦には振らない。追随して "坊ちゃん" と慕う達彦たちまでもが深々と頭を下げるが・・・、その時だった。
「待って、おじいちゃん。私に免じて桜子を許してあげて」
 それは笛子の言葉だった。来春の受験まで東京にいさせてあげましょう、そう言う笛子に桜子自身も驚きを隠せない。どういう心の変化なのか、一年間の浪人生活を認めるという笛子の判断にマロニエ荘の面々は泣き笑いの表情を浮かべ、マロニエ荘は拍手に包まれた。
 こうして、桜子にあと一度だけ受験の機会が認められた。


純情きらり 第8週「初めての連弾」 第44回 5月23日 (火)

 桜子は浪人生活を認めてくれたことを後悔だけはさせないと誓い、翌朝、笛子と徳治郎を見送った。
 夏を迎え、笛子の仕送りも時々は送られるようになった。徳治郎からはマサ (竹下景子)のように駆け落ちだけはするなと釘を刺されたが、当分は恋愛にすらかまけている余裕はない。桜子のピアノの稽古にも弾みがつくはず、だったが、ピアノのレッスン中に西園寺 (長谷川初範)は度々うとうとと寝入ってしまい、西園寺は自分のことなど相手にしていないのではないかと疑い始める。
 一方、達彦には八月に予定されている西園寺のドイツ演奏旅行に同行できるという又とないチャンスが巡って来ていたが、その話を実現させるためには両親の了解を得なくてはならない。実家に電話してみるが、予想通り、卒業後は家業を継がせようと決めている母・かね (戸田恵子)には話を切り出す余裕さえ与えられず、達彦は何も言えないまま受話器を置いた。
 その頃、マロニエ荘では、東京での三ヶ月間で本当にピアノが上手くなっているのか、そんな疑問に直面した桜子が思わずため息をついていた。すると、隣でもため息をついているハツ美 (たくませいこ)がいる。ハツ美は達彦に接近したいがなかなか手ごたえがなく、未だに挨拶程度しか交わしたことがないということが悩みだという。
 桜子はハツ美の頼みを聞き入れて、翌日、銀座の洋風カフェに達彦を招いて三人で食事会を開くことにした。しかし、ハツ美にとって間の悪い事に、そこで桜子が岡崎の女学校時代の親友・薫子 (松本まりか)と再会し、三人の食事会に薫子も加わることになった。薫子は出版社で編集の仕事をしているという。同郷のよしみで昔話に花が咲き、ハツ美はついに居場所を失い、カフェから逃げるように帰ってしまう。桜子はハツ美を追いかけようとするが、その瞬間、薫子が桜子を呼び止めてこう言った。
「このまえ私、思いがけない人に会ったんだよ。斉藤先生にお会いしたの。あんたが結婚の約束してた、あの斉藤先生にお会いしたんだよ」
 "斉藤先生"・・・、思いがけない人の名前を聞いて、桜子の心臓は大きく打ち始めた。


純情きらり 第8週「初めての連弾」 第45回 5月24日 (水)

 斉藤 (劇団ひとり)と再会できる距離にいることを実感する桜子だったが、どうしていいのかわからない。会いたいが、会えば気持ちが乱れてしまうかもしれない。しかし、そんな桜子以上に衝撃を受けていたのは達彦だった。"何だよ、婚約って・・・"、桜子と斉藤に婚約した過去があることを知らなかった達彦は動揺を隠し切れない。
 そんな中、桜子は達彦にドイツ演奏旅行の打診があったことを初めて知る。桜子は西園寺が達彦には目をかけていると感じ、自分は期待されておらず全く進歩していないんじゃないか、そう思い始める。そして、心の支えとしていたジャズを聴ける場所、ダンスホール「ニューオリンズ」は時局柄、女性の出入りが認められなくなり、ジャズ演奏もそのうち禁じられていくのではないかという。桜子は自分の居場所が失くなっていくような気がした。
 そして、とうとう "いかがわしい場所" と比喩されるダンスホールに桜子が通っていることが、るり子 (初音映莉子)を通じて西園寺塾の松尾 (村杉蝉之介)の耳に入ってしまった。この話を西園寺が知れば、桜子に破門の処分が下るかもしれない。達彦は事実を確認するまで西園寺に報告しないでほしいと松尾に頼んで定食屋で働く桜子のもとに向かった。しかし、事の重大さが思う様に伝わらず、達彦は桜子と衝突してしまう。
 そんな二人が言い争う最中、桜子の働きぶりを見ようと薫子が定食屋に訪れた。薫子は斉藤が翌朝十時に山口に発つことになり、出発前の斉藤と桜子が再会できるように予定だててくれるという。
 桜子の心に斉藤に会いたいという気持ちが募っていく。しかし、中途半端な姿は見せたくないと自分に言い聞かせ、桜子は翌朝もピアノの練習に励んでいた。だが、斉藤を純粋に好きでいられた頃の淡い思い出がよみがえったその瞬間、桜子は約束のカフェに向けて走り出していた。
 その時、玄関を飛び出してゆく桜子の後ろ姿を、達彦はただ見送ることしかできなかった……。


純情きらり 第8週「初めての連弾」 第46回 5月25日 (木)

 桜子が約束のカフェに着いた時、斉藤はすでに汽車の中にいた。斉藤は代わりに一通の手紙を薫子に預けていた。もしも会ってしまえば前進する心を挫くことになるかもしれない、そう思った斉藤はあえて桜子と会わない選択肢を選んだのだった。
 斉藤に会いたいという思いは砕かれ、マロニエ荘に帰ってきた桜子の瞳に堰を切ったようにこらえていた涙があふれてくる。達彦はそんな桜子に何と声をかけていいのかわからない。そこへ食事部屋を通りかかった冬吾が声をかけてきた。冬吾には不思議な包容力がある。桜子はマロニエ荘に来てから、たびたび辛い心情を吐露するようになっていた。
 失恋に涙する桜子に、冬吾はひとつ質問をした。口づけしたことはあるか、と。・・・桜子の返事は、いいえ……。それを聞くと冬吾は、男女の仲がどういうものか勉強不足だと言わんばかりの語調に変わる。それならばと、洋画を観たことはあるかと訊かれ、桜子が首を傾げていると、"勉強だ" と言う冬吾にあれよあれよと映画館まで連れて行かれることになった。
 上映作品の「舞踏会の手帖」は未亡人が20年前に舞踏会で踊った男たちに会いにゆくが、誰も彼も落ちぶれたりろくでなしになっていたり、という皮肉まじりの物語だった。
「おめえのこと泣かしたその男だって20年経ってみてみろ、"こんなのと一緒にならねえで、あ~、えがったなあ" って思う時が来るべさ」
 冬吾は斉藤を引きあいに出して婉曲的な言い方で励ます。まだ桜子にはその心境を理解することはできないが・・・、しかし、スクリーンの中の主人公に自分を重ねて桜子の心は解き放たれていった。
 達彦はずっと桜子のことを思い浮かべていた。知らなかった婚約の話、そして今日の涙。だが、マロニエ荘に帰ってきた桜子は一変、晴れやかな表情に変わっていた。「舞踏会の手帖」と「オーケストラの少女」という映画を二本続けて観てきたとパンフレットをのぞかせ、桜子はすっかり笑顔を取り戻している。苦しい胸のうちを忍ばせて桜子を出迎える達彦だったが、桜子はそんな達彦の気持ちに気付くはずもない。
 翌日から気分一新、意気揚々と西園寺の屋敷に向かう桜子だったが、松尾の判断によってレッスンの中止を言い渡されてしまう。西園寺が出張から帰り次第、破門の処分が下ることも覚悟しておく様に言われ、音楽を習う場所を失った桜子はダンスホールにいる秋山 (半海一晃)にすがるが、ここでも拒まれる。
 マロニエ荘に帰れば、達彦がまたしてもダンスホールに行ったことを咎めてくる。しかし、達彦は人のことを言う割には母には逆らえず、ドイツ演奏旅行の誘いを断るという。所詮はお坊っちゃんの道楽だと桜子は責めた。桜子なら石にかじりつく思いでその好機をつかむだろう。けれど、山長の跡取りである達彦の重荷がどんなものか、そう易々と好きな気持ちだけで突っ走るわけにはいかなかった。
 すると、"突っ走ってみたら・・・?"、そんな達彦に桜子がささやく。それがどんな意味をもっているのか、"君は俺の気持ちを全然わかってない"、達彦の本心が漏れだす。だが、達彦が胸を痛めているのは自分の立場をわかってくれないことだけじゃない。本当にわかってほしいのは……。
「全然気付いとらん、俺の気持ちを。・・・俺が君を・・・」
 切ない思いがあふれた瞬間、達彦は桜子を抱きしめていた。


純情きらり 第8週「初めての連弾」 第47回 5月26日 (金)

 達彦はハツ美の帰宅に気付き、すっと桜子から離れた。桜子は達彦の想いを初めて知り、部屋に急いで気を落ち着かせるのが精一杯だった。そんなことがあったせいか、翌日の二人はぎこちなく、顔を会わせても絶対にそこにはふれないようにしていた。
 そんな中、冬吾が "鶴の巣ごもり" と称する大作描き上げ期間に入った。そこへタイミング悪く冬吾に雑誌の挿絵を頼みたいという薫子がマロニエ荘を訪ねてくる。だが、鶴の巣ごもりの期間に突入する冬吾は常に緊迫しており、挿絵の依頼に追いすがる薫子を激しい口調でつっぱねる。意気消沈した薫子だったが、ふと、不自然に二人そろってマロニエ荘に住んでいる桜子と達彦の仲を詮索し始め、昨夜の戸惑いをぶり返す。達彦の方は見張り役、二人は言い聞かせるようにお互いの役柄を確認した。昨日の出来事を少しでも遠ざけたい気持ちでいっぱいだった。
 数日後、岡崎では、磯 (室井滋)鮎川周助 (中山仁)から受け取った手切れ金 (第6週 (36) ) とわずかな借金を元手に有森洋装店を開き、家族そろって祝いの式を執り行っていた。すると、達彦の母・かねが冷やかしに現れた。しかし、磯は今回は対抗手段をもっている。達彦が財閥育ちに似つかわしくないオンボロアパートに住んでいることを先日上京した徳治郎たちから聞いており、それを言えばかねも怯むに違いない。磯は冗談めかしてその急所をつついた。しかし、かねは達彦がそんな場所に住んでいるとは露ほども知らず、かねの表情はみるみるうちに険しくなっていった。
 時を同じくして、桜子はとうとう西園寺塾を退塾か否かの審判の時を迎えようとしていた。るり子によって、退塾に賛同する塾生たちの署名も集められている。達彦は自分もダンスホールに行ったことを打ち明け、誠意を込めて西園寺に具申した。
「有森がダンスホールに行ったのは遊びではありません。そこに素晴らしいジャズの演奏家がいて、その人の演奏に惚れ込んだからなんです。音楽を愛する気持ちが止められなかったんです」
 けれど、桜子の処分はまぬがれまい。るり子が冷笑を浮かべたその時、
「しかし、ヨーロッパではダンスは上流階級のたしなみです」
 西園寺は桜子を許すという。それにここは学校ではない。ワルツ、タンゴ・・・、西園寺は紳士淑女なら当然とばかりにその場で踊ってみせた。
 それでもるり子は桜子を才能のない生徒と決めつけ、桜子の退塾への足がかりをつくろうとする。それを聞いた西園寺はレッスン室にるり子、達彦、桜子を通し、即興でピアノを弾き始めた。るり子は驚いた、西園寺は楽譜もないその曲を弾いてみろと言うのだ。達彦もそんな真似はとても出来やしない。だが、桜子だけは臆することなくピアノの鍵盤に向かう……。


純情きらり 第8週「初めての連弾」 第48回 5月27日 (土)

 ピアノを弾き始めた桜子にるり子たちは驚愕する。桜子は見事に西園寺が奏でた音色を従順になぞってみせた。さらに、音楽を即興でアレンジする天性の才能。西園寺はすでに桜子の才能を見抜いていたのだった。敗北感に耐え切れず部屋を飛び出していったるり子を見て、西園寺はつぶやいた。
「悪い子じゃないんですよ、ただ、君を認めてしまうと自分を否定してしまうと思ったんでしょう」
 西園寺はそんなるり子も含めて若い芽を育てるという責務がある。とにかくひとつの山を越えた桜子だったが、そんな桜子のもとに笛子から手紙が届いた。
 その手紙を読んだ桜子は初めて知った。笛子が上京して桜子を岡崎に連れ戻そうとした時、達彦が桜子をかばっていたことを。しばしば衝突していた桜子だったが、誰より一番思ってくれていたのは達彦だった。
 しかし、その達彦は今、大きな壁に直面している。達彦はドイツ演奏旅行への思いを断ち切れずにいた。ドイツ語を人知れず勉強していることに気付いた桜子は、達彦のために何かしてあげたい、その思いから達彦にシルクハットをプレゼントした。ドイツ行きの餞別として……。達彦は桜子の気持ちに背中を押され、かねにドイツ行きを話してみることを約束する。桜子もまた、いつまでも達彦の味方でいることを約束し、達彦に誓いの口づけをした。
 冬吾がようやく作品を完成させたちょうどその頃、それを讃えるようにピアノのメロディが聴こえ、冬吾が食事部屋をのぞきに行くとピアノの連弾をしている桜子と達彦の姿が目に映った。
 それは桜子と達彦の距離がほんの少し縮まった、星がきれいな夜だった。
 しかし・・・、翌朝、朝食の仕度をする桜子たちのもとに、達彦が血相を変えて飛び込んできた。
 達彦と桜子が同じ屋根の下に住んでいることなど全く知らない母・かねが突然上京してきたのだった。


次週予告

来週は「今宵 (こよい) 、君と踊ろう」

達彦です。
マロニエ荘に突然やって来た母さんは、僕が桜子さんと同じアパートにいることにもうカンカン。
岡崎に帰るよう命じます。
時代が戦争へ進む中、西園寺先生やアパートの仲間にもその影があらわれ始めます。
そんな矢先、実家の父が倒れたという知らせを受け、僕は岡崎に帰ることになります。
僕と桜子さんの進む道はどうなっていくのでしょうか。
純情きらり、来週もお楽しみに。


純情きらり 第8週「初めての連弾」 今週からの出演者とゲスト

加藤晃良


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